久しぶりのダイアリイになります。
大事なことについては
作品そのものや、青月抄で書いているので
業務連絡以外あまりこちらに書くことがない…という昨年でした。
アトリエの窓から(お隣さんの見事な庭の)四季の移り変わりを見ながら
練習、仕込み、打ち合わせ、事務、練習、本番
のサイクルが静かに回り、特に代わり映えのしない毎日
でも、それが一番幸せです。
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今日は今年入って初めての終日オフ、まずは確定申告を終わらせました。
といっても、領収書と源泉徴収をまとめて税理士さんにお渡しするだけなので
自分の負担はたかが知れてます。
この前ツイッターか何かで
「なぜ他の人はこんなこともできないのか、自分にはすぐにできるけど」
と思うことが自分の才能だというようなものを見ました。
それでいうと、税理士さんから見れば
お金を計算してフォーマットに数字を入れるだけじゃん
ということが自分には向いてないので
そういったことはできるだけ得意な人にお任せしたいです。
ということで確定申告はもうずっと自分でしてないです。
人生万事がそういうことで、義務教育以降は
「得意なことか、好きなこと以外はしない」
の硬い覚悟で受験から仕事まで、それをできるだけ遵守しまして
結果このような人間になっています。
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一昨年新しいセロを作ってもらってから
ずっと弦に悩んでいました。
前の楽器で、紫〜雪〜沙漠あたりで使っていた
Evah Pirazzi soloist
Evah Pirazzi Gold
音量・倍音・長持ち、全てにおいてとても素晴らしい弦で
東京に来て7年くらいずっとこれが定番でした。
しかし最近の自分の心境とはズレが出てきて
また、今の楽器に張るとどうも全部の弦のバランスがこなくて
子どもの時にずっと使っていた
Obligato
新製品の
Perpetual
Warchal
定番
Jargar
など、色々試しました。
しかしながらどれもピッタリ来ない。
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見附精機工業様のエンドピンを選んだ時にも強く思いましたが
結局、最高のパーツというものはなくて
その時の心境や、弾く曲、作る曲や作品に合うか合わないか
それだけだと思います。楽器との相性もありますし。
しかし、弦の値段にはその楽器のプレーヤー人口が如実に反映されるため
セロ弦は1セットで3万円前後、
これはギターやバイオリンのように気軽に演奏会ごとに替えられる値段設定ではなく
自分にとっては、毎回かなり覚悟がいる額です。
しかも、この前Perpetualにしたのは確か12月の繁忙期前で、まだ3ヶ月も経っていないという…
否、選ぶ際の拠り所も、結局は自分の耳で過去に触れた音の積み重ねと比較するしかなくて
この、終わりなき弦選びも決して無駄な出費ではなく
自らの中に永久に溜まり行く知見として
身銭を切ることが一番の勉強になることを実践したいと思いまして
「(その弦に)替えたことがある」というのがいつか大きな財産にな(略)
「替える」と心の中で思ったならッ!その時スデに(略)
…経費(消耗品)でお願いします!
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全世界のセロ弾きの弦替えのディレンマにお付き合いいただきましたが
次に替えたいなと思っていたのが
Larsen Magnacore
マグナコア(マグネコア)、楽器を作ってもらったやちさんに名前だけ教えてもらっていまして
イタリアでは評判もいいとのこと、ただ日本だと
ネットにもまだ全然レビューがなくて、結構冒険でした。
が、これが今の自分にとっては一番良かったです。
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ふ、封蝋…?! 外袋に封蝋が!
単純なコストパフォーマンスとしては
費用も手間も無駄でしかない演出ではありますが…こんな弦初めて見たな。
あと、ビニール完全密閉の内袋だったので
通常のむき出し弦よりは酸化や劣化が少ないと思います
(この内袋も初めてです)。
この時点で、メーカーのかなりの自信を感じました。
業界紙レビューではないので、あとは音について端的にいうと
Pirazzi soloistの派手さと、
Perpetualの柔らかさを足して割って、
さらに音量を上げた印象でした。
前述の通り、自分はPirazzi soloistが(名前の通り)
ソリストの弦としてはある方向の一つの到達点だと思っていますが
その乾いた、カーンと抜けていく煌びやかさの倍音ではなく、
もっと濡れていて楽器自体の鳴動を促した結果の響きというか…。
今回買ったのが、
magnacore Arioso
という、ノーマルよりもテンションが弱いものらしく
もしかしたらよりそういった特性があるかもしれません。
弦を鳴らすだけだと全然響かなくて、楽器の奥を鳴らすことをより意識しないといけなかったので。
だからこそ柔らかさとブライトさが共存できるような印象でした。
とはいえ、まだ張りたてで自分のイメージよりは
ブライトすぎるので、もう少し落ち着いたらとてもいいバランスになると思います。
とても楽しみです。
いつかノーマルも張って比べてみたいなと思いました。
Ariosoって、名前もとても素敵ですよね。
アリオーソ、歌うように。
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ちなみにパッケージが一番モダンなのはこちら
Perpetual
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というわけで
3月はライブが2つ、あとはスタジオ仕事になってしまいますが
ライブで聞いてみてください。